J.E.邸
 

 プロジェクトは愛知県の名古屋駅から電車で15分とかからない、非常に利便性に優れた敷地にあり、築50年を超えた建て坪10坪という狭小平屋住宅の改修工事である。施主はこの住宅を機にしてめでたく夫婦となる極めて若い二人である。
この住宅の持ち主は夫婦の祖母であり、これまでこの狭さと築年故に安く賃貸してきた。二人が結婚した後の住まいとして提供することになり、当初は立替えも検討されたが敷地条件の悪さと、長い年月を大事にしたいという「思い」から、今回の改修工事を迎えることとなった。                                             結婚式を控えた若い夫婦二人の私に提示されたコストは、通常のやり方では実現を危ぶまれるほど低いものであり、今後の激しい困難が予想されるものであった。しかも改修工事の内容は築50年の年月により脆くなった構造の修復と設備一式を含む内・外装の一新であった。
施主からの要望は「問題の解決された気持ちのいい家」というものであり、後に彼らが出たあとは賃貸住宅とするため、賃貸不動産としての価値向上というものであった。この「問題」とは北側に面した道路の低い窓により、人の視線と交差してしまう開放できない窓と、入り口が開き扉であることにより、歩行者へ当たることの危険性の回避であった。また、唯一の開放窓が北側にあり、その窓は前述した通り常閉されてしまうので天井の低さと相まって閉塞感しか感じられない空間の解決であった。  
そこで窓は視線の交差しない高さにまで上げ、3.6mを超える壁面最大幅をFIXと両側を木製方引き建具として開放し、北側に面していながら、静謐な明るさを獲得することに成功した。また入り口は移動し、外壁と同じ材料を貼った木製片引き戸とした
 平面的には、外から手元の見えない製作キッチンが正面に鎮座する、8畳のリビング/キッチンを主室とし、奥には4畳程度のベッドルームを用意した。水回りと共に中央にプライベートとセミプライベート空間をつなぐ緩衝帯となる空間をサニタリーとして位置づけ、この空間を長さ3.5mの一続きのカウンターにより、PC作業/読書/洗顔/化粧/歯磨き等という行為をヒエラルキーなくすべて等価に扱っている。隔てる建具は全て引き込みとし、平面的ワンルームを実現した。
 断面的には構造補強された大梁の見えるダイナミックな空間とし、既存天井を取り払い、全室繋がった天井とすることで常に空気が流動する断面的ワンルームともいえる空間とした。
 コストに関しては、塗装は「工事への施主参加」という意味合いを込め施主と行い、家具、建具、左官などを大工工事とすることで工事種別を限界まで減らし、全てを極限まで切り詰め、削減をはかり、施工業者の協力もあってプロジェクトの完成をみた。一つのミスがプロジェクトを破壊しかねない緊迫状況の中で優れた施工をしてくれた小島工務店には感謝したい。
不動産価値の無くなった住宅が20年や30年で壊されていく中、今回の築50年を超える住宅が今後、装いを新たにしてこの街と長い時間対峙していけるというのはなかなかあることではなく、このすばらしいプロジェクトに参加できたことに感謝したい。

 
【Photo】  PERFECT+